漢方薬学とは?
現在、漢方薬は疾病の予防と健康促進、術後の治療、痛み緩和、西洋薬の副作用緩和などに対して高い治療効果をあげており、医師の約80%が何らかの形で漢方を利用していることからも、その効果の高さは広く認められています。
こうした現状を踏まえ、現代医学の中に漢方を組み込むための手法を分析・研究し、活用する-それこそが本学科の目的です。
医療の重要性についての認識が高まる中、漢方薬学の特徴である身体のバランス、食生活、体質や症状を重視するという考え方は、まさにこれからの医療に求められる考え方といえます。
医療現場における漢方薬の利用の多さから、漢方治療を行う病院やその処方箋を受ける調剤薬局など、実務現場で役立つ漢方についての知識を持つ薬剤師が必要とされています。
西洋医学と漢方医薬の
知識を兼ね備え、
漢方医療や民間薬医療にも
精通した人材の育成を実現
「漢方薬」と聞いて、どんなイメージが浮かびますか。
「昔ながらの古めかしい薬」と思ったら、それは大間違い。病気の予防や健康増進などの分野では、西洋医薬よりも高い効果を上げるものもあります。その効果を証明するように、実はすでに医師の約7割が漢方を利用しています。しかしながら、いままでの薬学教育は西洋医薬に大きなウェートが置かれ、漢方について豊富で実務的な知識をもつ薬剤師の育成は遅れてきました。 一方、漢方に基づく治療を行う病院や診療所は増加しつつあります。当然、処方せんをうける調剤薬局やドラッグストアでも、漢方薬の専門知識をもつ薬剤師が必要になるはずです。また、製薬メーカーの研究分野でも、漢方薬に精通した研究者が求められています。 漢方薬学科では、そんな時代が求める漢方に精通した薬剤師を育成します。
研究分野
薬品反応学
化学物質である医薬品を、その化学的性質の観点から理解することは、薬学がもっとも必要とする基本的なことがらである。医薬品の作用を構造式と関連づける構造活性相関、ドラッグデザインさらに医薬品分子の合成の基礎となる有機化学反応を研究する分野である。
薬品分析学
物質の構造の違いに由来する化学的あるいは物理的性質の差を利用して、種々の物質を定性的あるいは定量的に分析する手法を研究する分野である。分析技術は、薬学研究のすべての分野で必要とされる基礎技術としてその発展が切望されている。
天然物化学
漢方薬を構成する生薬や混合製剤の成分構造を化学的手段により研究・解明することは、漢方を理解する上で欠くことができない学問である。構造有機化学の技術を駆使して漢方独自の修治加工による成分変化、薬効変化も今後の研究課題である。
医薬品化学
創薬研究の第一歩として、薬のターゲットの探索、リード化合物の創製、その最適化と候補化合物の選定に到る作業は、従来と極端に変わっただけでなく、現状ではかなり経験的方法が用いられている。この点に関してさらに有機化学を基盤として学問の進展が必要である。
生薬学
漢方薬を構成する生薬をはじめ、家庭薬、民間薬、伝統薬などに用いられる個々の生薬について、その基元植物を明らかにし、生物学的特性、含有する成分、薬としての作用などを解明する学問である。生薬の加工、管理保存法、鑑別法、試験法などの製剤化に関する手法の改善も行う。
薬用資源学
天然資源に医薬品のソースを求める研究分野であり、医薬品原料の確保の観点から、微生物、植物、動物、鉱物などのアプローチや民間薬へのアプローチが必要である。薬用植物の育種、栽培生産、流通のほか、バイオテクノロジーによる動植物の増殖なども対象となる。
漢方薬物学
生薬の生理活性は、合成薬に比較して一般に作用が緩和であり、作用が特定していることなどから、その薬効の実験的証明にはより巧妙な手段を必要とする。エビデンス・ベイスド・メディシンとして新薬と同レベルの評価を経て、漢方を現代に活かすための研究領域である。
漢方治療学
漢方調剤を実施する際に、薬剤師が服薬指導、薬歴管理、疑義照会、病棟業務を的確に遂行するためには、漢方の臨床を知っておく必要がある。そのために漢方理論による診断と治療について研究し、漢方薬局における患者のセルフメディケーション推進する研究分野である。
カリキュラム
未病と同時に不老長生を理想とする漢方に精通した薬剤師を育成
1年次
漢方入門
医療現場での漢方に対する考え方や使用現状、さらに様々な疾病に対してどのような場合に漢方が有効かを知る、これから漢方薬学を学ぶ学科生の導入とします。
伝統医薬学
医療の原点として長い歴史を持つ民族固有の伝統医学、伝統薬物について、鍼灸やギリシャ医学、アーユルベーダなど様々な医療体系が持つ疾病予防や自己治療などの知識や食品等への応用について学びます。
2年次
本草学
西洋医学的な概念にとらわれない正しい漢方薬物認識の方法を身につけるため、薬物に関する記載の歴史的な変遵、漢方薬物本来の薬としての性質やその背景となる知識を、古典文献から学びます。
薬用植物学特論
医薬品開発の最も重要な資源である薬用植物。その薬品に利用されている植物成分や実用化のプロセスについて、また薬用天然資源の保護や生産性、流通、国際貿易、自然保護など広い知識を学びます。
生薬学特論
現在漢方で使用されているほぼ全ての生薬の基礎事項をマスターするため、日本薬局方収載の生薬をはじめ、局方外も含めた約250種類の生薬について、起源や特性、成分情報、薬理作用の特色と臨床応用例などを学びます。
3年次
民間薬概論
理論的裏付けが少なく応用の幅は狭いものの、一つの病気に対して、一つの薬が明確な効果を示し、安全性も高いと言える民間薬。その何が正しく、何が正しくないのかを判断する民間薬の基礎知識を学びます。
漢方理論 l
漢方薬の特徴である、独特の診断法、独自の生理・病理感に基づくアプローチ、複数の生薬の組み合わせを尊重する漢方製剤という3側面についてその理論を学びます。
漢方生薬化学
漢方生薬に含まれる化学成分について、分離精製法から化学反応性、薬理作用などを学び、化学的手段による成分探索法や定量法など品質評価の手法を学び、複合処方における成分試験法の実験計画を作成できる知識を身につけます。
4年次
漢方薬効解析学
複数の生薬を組み合わせるため、その複合作用の解明が難しい漢方。そこで、繁用される漢方生薬を例に、臨床データ等を学び、エビデンス・ベイスド・メディシンとして通用する言葉で説明できる能力を身につけます。
漢方理論 ll
漢方理論 l に引き続き、漢方独特の理論について学び、さらに感染症の治療理論として「傷寒論」を知り、風邪症候群の症状の解析とそれに用いられる多くの漢方処方を学びます。
漢方薬理学
漢方独特の診断や薬の選択等を現代医薬での実験による薬理作用、薬効評価、安全性評価を進めるため、漢方の薬理理論を現代薬学の手段・手法で解釈し、科学性を持って理解することを学びます。
5年次
漢方製剤各論 l
大きく二種類に分類される漢方製剤のうち、保険適用の医療漢方製剤についてその特徴と分配生薬、薬効、臨床的適応、服用法、服薬指導方法など詳しく学びます。
漢方製剤各論 ll
漢方製剤のうち、主に漢方調剤薬局で調剤され、保険の適応外となる漢方湯液の医療用漢方製剤との相違点を明らかにし、配合生薬や薬効服用法など詳しく学びます。
漢方治療学総論
医療現場で行われている漢方製剤の効果・効能、副作用や相互作用などについて詳しく学び、実際の漢方医療についての知識を身につけます。
6年次
漢方処方学
患者にあった漢方製剤を処方し、調剤するのに必要な知識について、また配合生薬の選別法、保管・管理などの基礎知識や問題点について学びます。
臨床漢方治療学 l
漢方医学の処方と診断についての学び、西洋医学的診断方法との比較によりその考え方の相違を理解します。また、現在使用されている漢方製剤が"個の医療"に対応するものである知識を身につけます。
臨床漢方治療学 ll
婦人性疾患やアレルギー疾患、慢性的な胃腸疾患、虚弱体質や自律神経失調症などの症例に用いられる漢方処方について、臨床例に基づいて学びます。
漢方品質評価論
漢方薬を安心して使用するために重要となる、品質保証。そのために薬剤師の立場から漢方製剤の安全性と有効性を患者に伝える詳報について学び、同時に漢方薬製剤メーカーの安全性などに関する品質評価への取組についても学びます。