新型コロナウイルス感染治療薬の提案に関する大類洋特任教授の論文発表について
HIV感染治療と感染防御に非常に有効なエイズ治療候補薬・EFdA(islatravir)の開発研究に基づいた抗新型コロナウイルス(Covid-19)
感染治療薬の提案について
新型コロナウイルス感染症につきましては、ワクチンと共に一刻も早い治療薬の開発が望まれている状況です。本学の大類洋特任教授が分子設計と合成を行い、ヤマサ醤油株式会社と満屋祐明博士(国立国際研究センター所長)との共同研究で開発した逆転写酵素阻害エイズ治療候補薬EFdA(islatravir)はMerck & Co.,Inc(米国メルク社)が2012年より、ヤマサ醤油(株)とライセンス契約を行い、臨床試験を進めています。
Islatravir は週1回0.5mgの経口投与で、現行1日1回投与のHIV薬TDFやTAFよりも遥かに優れた結果が得られており、多剤耐性HIVにも強力な活性を発揮し、かつ副作用は殆ど見られませんでした。更に、islatravir はHIVの感染防御にも非常に優れた結果が得られています。Islatravirの臨床試験は現在順調に進んでいます。今年3月、米国メルク社はギリアド・サイエンス社と共同でislatravirとHIV-1カプシド阻害剤(lenacapavir)との合剤を長期作用型治療薬として開発することに合意しました。強力で低副作用且つ長時間作用型のislatravirはHIV治療と感染防御のゲームチェンジャー或いはパラダイムシフトになると期待されています。
大類特任教授はEFdA (islatravir) の分子設計によって得た知見から (①逆転写酵素阻害ヌクレオシド薬に耐性HIVを出現させない方法、②ヌクレオシド薬の毒性(副作用)を低減させる方法、③ヌクレオシド薬が体内で酵素分解を受けず長時間活性を持続させる方法、等)、ヌクレオシド薬の分子設計が新型コロナウイルス治療薬の開発指針になることを期待し、多くの研究者によって優れた抗新型コロナウイルス薬が開発されることを願ってそのアイデアを阿見英一博士(科研製薬)と共同で論文発表しました。
当該論文は、アメリカ化学会誌ACS Medicinal Chemistry Letters(2021年4月8日号)に掲載されます。
論文最終稿.pdf