本学の谷英典准教授の論文が「International Journal of Molecular Science」のオンライン版で発表されました
RNA治療薬開発の進展と展望 谷 英典 2024年11月18日(月)
「発表のポイント」
・RNA治療薬は、1970年代後半の誕生以来、驚異的な進化を遂げ、従来治療が困難だった疾患に対する新たな治療法を提供している。
・アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)(注1)、小分子干渉RNA(siRNA)(注2)、マイクロRNA(miRNA)(注3)、メッセンジャーRNA(mRNA)(注4)など、多様なモダリティを詳しく解説
・RNA治療薬は、遺伝性疾患や癌などの個別化医療において有望視されており、今後も開発の進展が期待される
「発表概要」
横浜薬科大学 薬学部 健康薬学科 生体防御学研究室 谷 英典 准教授は、RNA治療薬の進展と展望に関する総説論文を発表しました。RNA治療薬は、1970年代後半から急速に進化し、従来治療が困難だった疾患に対する新たなアプローチを提供しています。アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、小分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)など、多様なモダリティが存在し、それぞれ独自の作用メカニズムと応用があります。特にCOVID-19パンデミックにおけるmRNAワクチンの成功は、RNA治療薬の可能性を世界に示し、今後の医療分野での応用が期待されています。2023年、2024年にそれぞれ「mRNAワクチン」と「マイクロRNA」の研究がノーベル生理学・医学賞に輝いたことは、本分野の重要性を物語っています。
「発表内容」
1978年に合成オリゴヌクレオチドがウイルス複製を阻害することが発見されて以来、RNA治療薬は急速に進化してきました。1998年にはRNA干渉(RNAi)の発見があり、この技術は遺伝子発現を制御する強力な手段として注目されました。本技術の開発により、ノーベル生理学・医学賞を受賞しています。また、2020年にはCOVID-19パンデミックによってmRNAワクチンが急速に開発され、その高い有効性が証明されたことで、RNAベースの治療法への関心がさらに高まりました。
しかし、依然として多くの課題も残されています。例えば、RNA治療薬の安定性や標的組織への送達方法、副作用や免疫原性などです。これらの課題に対処するため、RNAの化学修飾やAI技術を活用した設計最適化など、新たな技術開発が進行中です。特にAI技術を用いた高次構造予測や安定性向上は、将来的なRNA治療薬開発の加速につながると期待されています。現在、遺伝性疾患や癌などに対する個別化医療アプローチとしても注目されており、新たな治療法開発への道が開かれています。
「発表雑誌」
雑誌名:「International Journal of Molecular Science(I.F. = 4.9)」(オンライン版:2024年11月15日)
論文タイトル:Recent advances and prospects in RNA drug development
著者:Hidenori Tani*
* Corresponding author
DOI番号:https://doi.org/10.3390/ijms252212284
論文URL:https://www.mdpi.com/1422-0067/25/22/12284
「用語解説」
- アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO): 特定のmRNA配列と結合し、その機能を調整する短鎖DNAまたはRNA分子。
- 小分子干渉RNA(siRNA): 特定のmRNAを標的として、その翻訳を阻害する二本鎖RNA分子。
- マイクロRNA(miRNA): タンパク質をコードしない短鎖非コードRNAであり、遺伝子発現を調節する役割を持つ。
- メッセンジャーRNA(mRNA): DNAから転写された遺伝情報を細胞内でタンパク質合成に利用する役割を持つ。
【本件に関するお問い合わせ先】
<研究に関するお問い合せ>
横浜薬科大学 健康薬学科 生体防御学研究室 谷 英典
TEL:080-5035-9545(直通)
Email: hidenori.tani@yok.hamayaku.ac.jp
<報道に関するお問い合せ>
横浜薬科大学 メディアセンター担当 鈴木 誠司
TEL:045-859-1355
Email: sei.suzuki@hamayaku.ac.jp
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論文内容(英語)
ijms-25-12284.pdf